複数のマイクを同時に録りたいのに入力が足りない人へ。MOTU OctaLiteは何ができる?

「ドラムを録りたいのに、マイクを立てても入力が2つしかない……」
「バンドで一発録りしたいけど、今のオーディオインターフェースだと全然足りない」
そんなときに名前が挙がってくる新製品が、MOTU(モツ)の「OctaLite(オクタライト)」です。
オーディオインターフェースというのは、ギターやマイクの音をパソコンが扱えるデータに変えて取り込み、パソコンが鳴らした音をヘッドホンやスピーカーへ送り出すための箱のこと。ギターで言えば、シールドの先でパソコンをアンプ代わりにつなぐための「入口と出口」です。
先に結論をまとめます。
- OctaLiteは、マイクや楽器を8つ同時につなげる、ハーフラック(業務用ラックの半分の幅)サイズのUSBオーディオインターフェース
- 手持ちのインターフェースに光ケーブルでつないで、入力を8つ足す「増設ボックス」としても使える
- パソコンなしで動くミキサーにもなるので、1台3役
- 価格は税込149,600円。最初の1台というより、「入力が足りなくなった人」向け
- ギターと歌を宅録する程度なら、入力2つの機種で十分。合わない人にははっきり合いません
ここからは、何ができる機材なのかを順番にほどいていきます。


OctaLiteの正体は「入力が8つある、小さな箱」
マイクプリアンプというのは、マイクが拾った小さな信号を、録音に使える大きさまで持ち上げる回路のこと。ギターアンプでいえば、ゲインのつまみ(ボリュームの手前で音を太くする部分)にあたります。これが8つ入っている、というのがOctaLiteの核です。
筐体は幅22cm、重さ約1.36kgのスチール製ハーフラック。ハーフラックというのは、スタジオ機材をはめ込むラック棚の半分の幅という意味で、要するに「かなりコンパクト」ということです。8chのマイクプリアンプがこのサイズに収まっているのが、この製品のウリになっています。
使い方は大きく3通りあります。
- パソコンやiPadにつなぐ、ふつうのUSBオーディオインターフェースとして
- パソコンなしで使うスタンドアロンのミキサー(音をまとめて混ぜる卓)として
- 別のインターフェースの光入力につなぐ、8chの光エクスパンダー(増設ボックス)として
ギターで言えば、1本のギターが「クリーンも歪みもこなして、アコギ代わりにもなる」みたいなもの。用途が1つに縛られないのが面白いところです。
基本スペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 種別 | USBオーディオインターフェース/デジタルミキサー/光エクスパンダー |
| マイク・ライン・楽器入力 | XLR/TRSコンボ×8(前面2・背面6)、ギターを直接挿せるHi-Z対応 |
| プリアンプ | 最大+74dBのゲイン、各入力に−20dBパッドと+48Vファンタム電源 |
| アナログ出力 | バランスTRS×2(L-R) |
| ヘッドホン出力 | 1/4インチ ステレオ×1 |
| 光デジタル | 入力×1・出力×1(ADATまたはステレオTOSLink)、SMUX用の出力×1 |
| 入出力数 | 44.1/48kHzで16入力/12出力、88.2/96kHzで12入力/12出力、176.4/192kHzで8入力/4出力 |
| サンプルレート | 44.1/48/88.2/96/176.4/192kHz |
| PC接続 | USB-C(USB 2.0)、クラスコンプライアント |
| 対応OS | macOS 12以降、Windows 11、iOS 13.5以降 |
| サイズ・重量 | 約22×17.5×4.5cm、約1.36kg |
| 電源 | 15V DCアダプター |
| 価格 | 税込149,600円(ハイ・リゾリューション) |
表の言葉がよく分からなくても大丈夫です。この先で、ひとつずつかみ砕いていきます。
入力が8つあると何がうれしい?
ギター1本とボーカル1本の弾き語りなら、入力は2つで足ります。8つ必要になるのは、たとえばこんな場面です。
- ドラムを、スネア・バスドラム・タム・オーバーヘッド(上から全体を狙うマイク)などで録る
- バンドで同時に演奏して、そのまま一発録りする
- 配信やポッドキャストで、複数人の声と楽器をまとめて扱う
イメージとしては、ギターアンプ8台にそれぞれマイクを立てて、全部まとめて別々のトラックに録れる感じ。録ったあとのミックスで、音量や左右の位置を1本ずつ調整できるので、仕上がりの自由度がぐっと上がります。
入力端子はXLR(マイク用の3ピン端子)にも、ギターのシールドをつなぐTRS(フォーン)にも対応するコンボ端子。1MΩのHi-Z(ハイインピーダンス)入力に対応しているので、エレキギターやベースをそのまま直接挿して録音することもできます。
各入力には+48Vのファンタム電源があって、チャンネルごとに入り切りできます。ファンタム電源は、コンデンサーマイクが動くための電気をインターフェース側から送る仕組み。ギターで言うと、アクティブピックアップに入れる電池の役目を、機材側が代わりに担当してくれているようなものです。
ちなみに、内蔵プリアンプを通さずに外付けのプリアンプの音をそのまま取り込みたい、という場面もあります。その考え方はオーディオインターフェースのプリアンプをプリスルーさせる方法で手順つきで解説しているので、機材を増やしていく予定の人は目を通しておくと役に立ちます。



実際、一人で自宅で使うだけなら2つ入力端子があれば事足ります。



複数人で録音するようなとき、ライブ録音するようなときに8チャンネルあると便利。



「チャンネルが増える=価格が上がる」ため、用途にあわせないとオーバースペックになる可能性があります。どんな音楽活動をしたいのか?は想像しておく必要あり。



スペックを過剰にしておき、何が起きても対応できるようにするという考え方もあります。
バンド活動をやっている人だたとこの考え方のように機材の余裕を持っておくと、将来の活動の制限によるストレスが減らせます。
光端子で「入力を足せる」のがOctaLiteの面白さ
OctaLiteの背面には、光ケーブル(ピカッと光る細いケーブル)をつなぐ光デジタル端子があります。ここが、ふつうの8入力インターフェースとの大きな違いです。
ADAT(アダット)って何?
ADATは、光ケーブル1本で最大8チャンネル分の音声をやり取りできる規格です。チャンネルというのは音の通り道の本数のことで、シールド1本ぶんが1チャンネル。ギターで言えば、8本のシールドの信号を1本のケーブルにまとめて、別の機材へ渡せるイメージです。
OctaLiteは、この光端子を使って、UltraLite-mk5、828、16Aなど、光入力を持つインターフェースにマイク入力を8つ追加できます。「今のインターフェースは気に入っているけど、入力だけ足りない」という人は、買い替えずに足すという選択ができるわけです。
しかも、マイクプリアンプの回路は、同じMOTUのUltraLite-mk5と共通だと案内されています。本体を2台並べて使うための連結キットも用意されていて、2台を1ラックスペースに収めればマイク入力16系統という構成も組めます。
SMUXとTOSLinkはどういうもの?
細かい話ですが、名前だけ出てくるので触れておきます。
- SMUX(エスマックス):サンプルレートを上げると、光ケーブル1本で運べるチャンネル数が減ってしまいます。その足りない分を、もう1本の光出力で運ぶための方式です。88.2/96kHzのときにチャンネル5〜8を送る専用の出力が用意されています
- TOSLink(トスリンク):ステレオ2チャンネルだけをやり取りするシンプルな光の規格(光S/PDIF)です。光端子はこちらに切り替えることもできます
全部を覚える必要はありません。「光端子があるから、ほかの機材と組み合わせて入力や出力を増やせる」と覚えておけば十分です。
音質と遅れの少なさ
入力が多くても、ノイズだらけだったり、弾いてから音が返ってくるまでの遅れが大きかったりしたら、録音には使いにくくなります。OctaLiteは、このあたりも数字で示されています。
- マイク入力部:Burr-Brown製のオペアンプを使い、ノイズの少なさを示すEIN(等価入力雑音)が−129dBu。数字がマイナスに大きいほどノイズが小さい、と考えてください。ギターアンプで言う「ゲインを上げてもサーッというノイズが目立ちにくい」状態に近いです
- 出力部:ESS社のDAC(デジタルの音をアナログに戻す部品)「ES9026PRO」を採用。ラインアウトのダイナミックレンジ(小さい音から大きい音までの幅)は125dBとされています
- レイテンシー:MOTUのドライバー使用時、96kHz・ホストバッファ32サンプルの条件でラウンドトリップ2msと示されています。ラウンドトリップというのは、入力から出力まで往復する遅れのことで、約0.002秒。ギターで言えば、弾いてからヘッドホンで音が返ってくるまでの「間」が、ほとんど気にならない水準を狙った数字です
この2msは、条件がそろったときの目安です。実際の遅れはパソコンの環境や設定でも変わるので、「うまく設定すればここまで詰められる」くらいに受け取っておくのがちょうどいいでしょう。
DSPミキサーとCueMix 5で「録りながら聴く音」を作る
OctaLiteには、DSP(機材の中でエフェクト処理を専門にこなすチップ)が入っています。ギターで言えば、アンプの中にリバーブとEQが最初から入っているようなものです。
搭載されているのは、リバーブ、4バンドのパラメトリックEQ、コンプレッサー、ゲートといった基本のエフェクト。MOTUの案内では、ヘッドホンに返すモニター用の音、録音する音そのもの、あるいはその両方にかけられるとされています。パソコンに負荷をかけずに、歌いやすい・弾きやすい音を作れるのがうれしいところです。
エフェクトの中身が気になる人は、EQならEQのハイパス・ローパスって結局何?アンプのトーンノブで例えると一発で分かる、リバーブならリバーブの種類がよく分からない人へ。ギターアンプのキャラの違いで例えると一発で分かるを先に読んでおくと、設定画面で迷いにくくなります。
CueMix 5ってなに?
設定をパソコンやiPadの画面から行うアプリが「CueMix 5」です。Mac、Windows、iOSで動きます。画面上のフェーダー(音量を上下するスライダー)でミックスを作ったり、EQを調整したり、背面ラインアウト用・前面ヘッドホン用・ループバック用のミックスを別々に組んだりできます。
本体の前面には大きめの白色OLEDディスプレイと回転ノブがあって、基本的な設定は本体だけでも操作できます。パソコンを開かずにリハーサルスタジオやステージで音を整えたい場面で、助かる作りです。
ループバックで配信にも使える
もうひとつの特徴が、ループバックという機能です。パソコンから出ている音(BGMや通話相手の声など)と、OctaLiteにつないだマイクの音を混ぜて、もう一度パソコンへ戻せます。
配信やポッドキャストで、自分の声とBGMを別々に調整しながら、まとめて配信ソフトへ送りたいときに使います。仮想のミックスバス(音をまとめる通り道)が3系統あるので、用途ごとに違うミックスを組めます。
付属ソフトとラックマウント
OctaLiteには、すぐに音楽制作を始められるソフトが付いてきます。
- Performer Lite:100種類以上の音源と多数のエフェクトが入ったMOTUのDAW(曲を作るソフト)
- Ableton Live Lite:もうひとつのDAW
- 約6GBのループ素材(登録後にダウンロード)
- CueMix 5:前述のミキサーアプリ
「機材は買ったけど、録音するソフトがない」という状態を避けられるのは、初心者にはありがたいところです。
また、別売りのハーフラックマウントキットを使えば、ラックに固定できます。別売りの連結キットで2台を横に並べれば、ラック1段分にマイク入力16系統が収まります。持ち運びの多い人も、スタジオに据え付けたい人も、組み合わせ方に幅があります。
MOTUってどんなメーカー?
MOTU(Mark of the Unicorn)は、アメリカ・マサチューセッツ州に拠点を置く音楽制作機器・ソフトのメーカーです。MIDIシーケンサー(打ち込んだ演奏データを自動で再生してくれるソフト)の「Performer」や、その流れをくむDAW「Digital Performer」を手がけてきた老舗で、オーディオインターフェースでは「M2」「M4」「UltraLite-mk5」などを出しています。
ソフトとハードの両方を自社で作っていて、パソコンと機材のあいだに入る「通訳」役のドライバーも自社で用意しています。通訳がうまく働かないと、音が途切れたり遅れが大きくなったりするので、ここは録音機材ではかなり大事なポイントです。 ギターで言えば、ボディもピックアップもアンプも同じメーカーで一貫して作っているようなもの。相性の悪さに悩まされにくい、という安心感につながります。
同じ「8マイクプリ+光拡張」の機種と比べると
8つのマイクプリアンプと光端子による拡張を備えた機種は、ほかにもあります。海外メディアでは、OctaLiteの比較相手として、FocusriteのScarlett 18i20やAudientのEVO 16が挙げられています。
ただ、OctaLiteの特徴は、MOTUが「ハーフラックの小さな筐体で8マイクプリを積んだインターフェース」として打ち出している点です。持ち運びやすさと、スタンドアロンのミキサーとして動くことが、選ぶときの分かれ目になりそうです。
同じように大量の入出力を扱う高級機の例としては、RME Fireface UFX IIIの紹介記事、エフェクト内蔵の高級インターフェースならAntelope Audio ZEN TOURのレビューもあわせて読むと、違いがつかみやすくなります。
良いところ・惜しいところ
良いところ
- 8つのマイクプリアンプを、ハーフラックの小さな筐体に収めている
- 光ケーブルで、手持ちのインターフェースに入力を8つ足せる
- パソコンなしで動くミキサーにもなる
- DSPでリバーブ・EQ・コンプ・ゲートをかけたモニターミックスを作れる
- Hi-Z入力でギターを直接つなげる
- 付属のDAWですぐ録音を始められる
惜しいところ
- 税込149,600円と、入力を使い切らない人には持て余しやすい価格
- アナログ出力は2系統、ヘッドホン出力は1系統。バンド全員が各自のヘッドホンで聴きたいなら、ヘッドホンアンプを別に用意する必要が出てきます
- 対応OSはmacOS 12以降、Windows 11。Windows 10のままの人は、OSの更新が前提になります
- 電源は15V DCアダプター。USBバスパワーでは動かないので、コンセントの近くで使う前提です
向いている人・向いていない人
ここまで読んで「すごいけど、自分に必要なのかな?」と感じた人もいるはずです。はっきり言うと、ギターと歌を宅録する程度なら、入力が2つのインターフェースで足ります。OctaLiteは必要ありません。
OctaLiteが向いているのは、こんな人です。
- ドラムをマイクで録る、あるいはバンドで一発録りをしたい
- 配信やポッドキャストで、複数人・複数のマイクを同時に使いたい
- 光入力のあるインターフェースを持っていて、入力数を増やしたい
- 持ち運んで、リハーサルやライブの音をまとめたい
逆に、向いていないのはこんな人です。
- 初めてのオーディオインターフェースを探している人
- 入力が1〜2つあれば足りる人
- アナログ出力を何系統も使いたい人
最初の1台なら、まずは入力2つのコンパクトな機種から始めて、入力が足りなくなった段階でOctaLiteのような機種に進む順番でも遅くありません。あわてて買い替えるより、足せる機材を選んでおく発想です。
YouTubeの先行レビュー動画
発売直後のOctaLiteを取り上げた日本語の動画のリンクです。
- 【衝撃】MOTU OctaLite ハーフラックに8マイクプリ 徹底レビューと活用法 CueMix 5 の解説も!(HIGESTUDIO /内田智之チャンネル)
価格・発売日・購入先
国内の価格は税込149,600円です。国内では2026年10月28日に発売されています。
販売はハイ・リゾリューションが担当しています。製品の詳細は、ハイ・リゾリューションの製品ページ、MOTU公式のOctaLiteページ、島村楽器の紹介ページで見られます。
購入するなら、Sound HouseのMOTU OctaLiteのページも選択肢です。価格や在庫は変わるので、購入前に各販売店の表示も見ておきましょう。
FAQ
iPadやiPhoneでも使えますか?
使えます。USBクラスコンプライアント(専用ドライバーなしで動く方式)に対応していて、iOS 13.5以降が対象です。USB-C端子のiPadなら直接つなげます。Lightning端子の機種は、アダプターキットを使う形になります。ミキサーアプリのCueMix 5もiOSに対応しているので、iPadでミックスの操作もできます。
パソコンなしでも使えますか?
使えます。スタンドアロンのミキサーとして動くので、スタジオやステージで、パソコンを開かずに複数のマイクをまとめて鳴らせます。基本的な設定は、前面のOLEDディスプレイと回転ノブで操作できます。
ADAT入力のない機材にも、入力を足せますか?
光端子をステレオのTOSLinkに切り替えれば、2チャンネル分を渡せます。相手側にTOSLinkの光入力があれば、2チャンネル足すことは可能です。8チャンネルをまとめて渡したいときは、相手側にADAT入力が必要になります。
低レイテンシーのドライバーは必要ですか?
MOTUの案内では、WindowsはASIOとWAVEのドライバーに対応し、macOSの低レイテンシードライバーは任意の扱いです。本文で紹介した2msという数字は、MOTUのドライバーを使った条件で示されたものです。
付属のPerformer Liteでは何ができますか?
MOTUのDAWの入門版で、100種類以上の音源と多数のエフェクトが入っています。ギターやマイクを録音して、音源を鳴らして、ループ素材を重ねるといった基本の曲作りを、追加購入なしで始められます。Ableton Live Liteも付属します。
まとめ
MOTU OctaLiteは、8つのマイク入力を持つUSBオーディオインターフェースであり、スタンドアロンのミキサーであり、手持ちの機材に入力を足す光エクスパンダーでもある、1台3役の製品です。
ドラム録音やバンドの一発録りを始めたい人、入力が足りなくなった人にとっては、有力な選択肢になります。一方で、入力が2つあれば足りる人には、価格もサイズも持て余す機材です。
──入力が足りなくなったときに、買い替えるのではなく「足す」という道を選べる。そこがOctaLiteのいちばんおいしいところだと思います。ただ、149,600円という値段を考えると、本当に8つ使い切るかどうかは悩ましい……そこだけは、自分の録り方と相談してみてください。








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