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EQのハイパス・ローパスって結局何?アンプのトーンノブで例えると一発で分かる

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DTMを始めて最初にぶつかる壁の1つが「EQ(イコライザー)」です。

プラグインを開くとグラフのような画面が出てきて、バンドをドラッグすると音がどう変わるかはなんとなくわかる。でも、その中によく出てくる「ハイパスフィルター」「ローパスフィルター」という言葉、そしてグラフの端っこにある斜めの線——これが何をしているのか、実はちゃんと説明できない。そんな人は多いはずです。

「ハイパスって高い音を通すんだよね?それとも高い音をカットするんだっけ?」「ローパスは逆?」——名前だけ見ると逆に覚えてしまいそうになる、初心者がほぼ全員一度は混乱するポイントです。

結論から言うと、この2つの仕組みはとてもシンプルです。そして、ギターやアンプを触ったことがある人なら、実は普段から近いものを操作しています。この記事では、EQの基本的な役割から、ハイパス・ローパスがそれぞれ何をカットしているのか、そして実際のミックスでどう使うのかまで、ギターの機材に例えながら一気に整理していきます。

目次

ここが結論:EQは「音量調整を周波数ごとに行うツール」

まずEQ全体の役割を一言でまとめると、こうなります。

  • EQ(イコライザー):音を「低い音」「中くらいの音」「高い音」といった帯域(周波数帯)に分けて、それぞれの音量を個別に上げたり下げたりする道具

普通のボリュームフェーダーは、曲全体・トラック全体の音量を一括で上げ下げします。それに対してEQは、「低音だけ」「中音だけ」「高音だけ」というふうに、音を細かく仕分けてから、その一部分だけの音量を操作できる——これがEQの本質です。

そしてハイパスフィルター・ローパスフィルターは、このEQの中でも特に「ある一定のラインから外側の帯域を、まるごとバッサリ削る」ための機能です。名前が似ていて紛らわしいのですが、仕組みを図解するとすぐに整理できます。

ハイパスフィルター=「低い音をカットして、高い音を通す」

まずはハイパスフィルターから説明します。

ハイパスフィルター(High-Pass Filter、略してHPF)は、設定した周波数より低い音をカットして、高い音だけを通すフィルターです。 「ハイ(高い音)をパス(通過)させる」という意味だと考えると覚えやすいはずです。

EQのグラフで見ると、ハイパスフィルターは画面の左端(低い周波数側)から右に向かって斜めの線が立ち上がっている形をしています。この斜めの線より左側(低い方)の音は、音量がどんどん下がっていき、最終的にはほぼ聞こえなくなります。逆に、線より右側(高い方)の音は、そのままの音量で通過します。

ギターアンプで例えると:トーンノブの「トレブル寄り」の効き方

ギターを弾いたことがある人なら、アンプやエフェクターについている「トーン」ノブを回した経験があるはずです。あのノブをトレブル側(高音側)に寄せていくと、ジャキジャキした音の輪郭は残りつつ、こもったような低音の成分が削られていく感覚があります。あれが、ハイパスフィルターの動きにとても近いです。

もう少し正確に言うなら、アコースティックギター用のピエゾピックアップに搭載されている「ローカットスイッチ」がまさにハイパスフィルターそのものです。ボディの共鳴で出てしまう「ボンボン」という低い箱鳴りノイズだけを削って、弦の音の輪郭を残す——DTMのハイパスフィルターも、これと同じ発想で使います。

ローパスフィルター=「高い音をカットして、低い音を通す」

次にローパスフィルターです。名前の通り、ハイパスとは逆の動きをします。

ローパスフィルター(Low-Pass Filter、略してLPF)は、設定した周波数より高い音をカットして、低い音だけを通すフィルターです。 こちらは「ロー(低い音)をパス(通過)させる」と覚えておけば混同しません。

EQのグラフでは、ローパスフィルターは画面の右端(高い周波数側)から左に向かって斜めの線が下がっていく形になります。この線より右側(高い方)の音がどんどん削られ、線より左側(低い方)の音はそのまま残ります。

ギターアンプで例えると:トーンノブの「バス寄り」の効き方

先ほどのトーンノブを、今度はベース側(低音側)に寄せていくとどうなるか。ジャキジャキした高音のアタック感がなくなり、音全体が丸く、もこもことした印象に変わっていくはずです。これがローパスフィルターの効き方です。

もっとイメージしやすい例で言うと、ワウペダルをかかとまで踏み込んだ状態や、ギターのボリュームノブを絞ったときに一緒に高域が削れて「モワッ」とした音になる現象も、簡易的なローパスフィルターの一種と考えると理解しやすいです。エフェクター好きな人なら、ファズペダルのトーンを絞ったときの、あの丸くこもった音を思い出してもらえれば十分です。

名前が逆に感じる人へ:覚え方のコツ

「ハイパス=高い音を通す」「ローパス=低い音を通す」という名前と動きの対応は、慣れるまで何度も混乱しがちです。次のように覚えると迷いにくくなります。

  • ハイパス(High-Pass)= High(高い音)をPass(通過)させる=低い音を削る
  • ローパス(Low-Pass)= Low(低い音)をPass(通過)させる=高い音を削る

「パスする(通す)対象の名前がフィルター名になっている」と意識すれば、「カットする対象」と名前が逆に見える違和感がなくなります。

使いどころ①:ボーカルの不要な低域をハイパスでカットする

ハイパスフィルターの、DTMで最も定番の使い方がこれです。

ボーカルを録音すると、声そのものには関係のない低い周波数のノイズがどうしても混ざります。マイクスタンドの振動、部屋の空調音、吹かれ(ポップノイズ)、あるいは単純に人の声の帯域として意味を持たない超低域の成分——これらは音楽的な情報を持たないまま、ミックス全体の低域を濁らせる原因になります。

そこで、ボーカルトラックの最初にハイパスフィルターを挿し、だいたい80Hz〜120Hz前後より下をカットしてしまいます。男性ボーカルか女性ボーカルか、声の低さによって最適な設定値は変わりますが、「声そのものの太さが失われない範囲で、できるだけ低域を削る」のが基本の考え方です。

これをやると、ベースやキックドラムが本来担当すべき低域のスペースに、ボーカルの不要な低音が割り込んでこなくなり、ミックス全体がグッとスッキリします。ギターで言えば、ベースアンプとギターアンプが同じ低域の帯域を取り合わないように、ギターアンプ側のトーンを少し高音寄りに調整して住み分けるのと同じ発想です。

同じ理由で、ギタートラックやシンセのリードトラックなど、「低域そのものが主役ではないパート」には、ハイパスフィルターをほぼルーティン作業としてかけておくミキシングエンジニアも多いです。

使いどころ②:シンセパッドの高域をローパスで削って耳に痛くない音にする

ローパスフィルターの定番の使いどころが、シンセパッド(持続音系の音色)の調整です。

シンセで作ったパッド系の音は、倍音が豊かでキラキラした高域成分をたくさん含んでいることがよくあります。単体で聴くと華やかで気持ちいいのですが、曲の中でボーカルやリードシンセ、シンバル類と一緒に鳴らすと、高域同士がぶつかり合って、耳に刺さるような痛さや、全体的な「シャリシャリ感」の原因になります。

ここでパッドのトラックにローパスフィルターをかけ、高域の一部を丸く削ってあげると、パッドは主張しすぎない「背景の響き」として馴染みやすくなり、リードパートやボーカルの高域がしっかり前に出てくるようになります。

さらに、シンセの音作りにおいては、ローパスフィルターのカットオフ(どこから削るか)をゆっくり動かして、音が徐々に明るくなっていく・暗くなっていく変化を作る「フィルタースイープ」というテクニックもよく使われます。イントロで音がじわじわ開けていくような演出は、多くの場合このローパスフィルターの動きによって作られています。ギターで言えば、ワウペダルをゆっくり踏み込んで音色を変化させる感覚に近いものがあります。

カットの「急さ」を決めるスロープという考え方

ハイパス・ローパスにはもう1つ、初心者が見落としがちな設定項目があります。それが「スロープ」(傾き)です。

EQのグラフで見た、あの斜めの線の角度を決めるのがスロープです。角度が緩やかであれば、設定した周波数のあたりからじわじわと削れていきます。角度が急であれば、設定した周波数を境に、かなりハッキリと音がバッサリ削られます。

多くのプラグインでは「6dB/oct」「12dB/oct」「24dB/oct」といった数値で表示されます。数字が大きいほど、カットの角度が急になる(=より正確に境界線を引ける)と考えておけば十分です。

  • 緩やかなスロープ:自然でナチュラルな仕上がりにしたいとき向け。カットしていることに気づかれにくい
  • 急なスロープ:不要な帯域をはっきり削り切りたいとき向け。ハウリング対策や、明確にレンジを絞りたい場面で活躍

ボーカルの低域処理のように「音楽的な部分は残しつつ、不要な部分だけを静かに削りたい」場面では緩やかなスロープ、逆に「ここから下(上)は完全に不要」と言い切れる場面では急なスロープ、というふうに使い分けると失敗が減ります。最初のうちは、プラグインのデフォルト設定のまま、カットオフの周波数だけを耳で確認しながら動かす練習から始めれば十分です。

ハイパスとローパスを両方使うと「バンドパス」になる

ハイパスフィルターとローパスフィルターは、実は組み合わせて使うこともよくあります。低い方をハイパスでカットし、高い方をローパスでカットすると、真ん中の帯域だけが残る状態になります。これを「バンドパスフィルター」と呼びます。

わかりやすい例が、ラジオやスマホの内蔵スピーカーから流れてくる、あの少しこもって、かつ低音もスカスカな音です。低域も高域も両方削られて、中域だけが強調された、あの独特のサウンドはバンドパスフィルターによって作られています。曲の中で「昔のラジオから流れてきたような音」を演出したいときに、あえてこのバンドパス処理を使うテクニックも定番です。

ギターで言えば、シングルコイルピックアップのブリッジ側で弾いたときの、あの中域が前に出た「ツインツイン」とした音色をイメージすると近いかもしれません。低音も高音も欲張らず、中域の存在感だけで勝負する音作りです。

実際のミックス作業の流れ

ここまでの話を踏まえて、実際の作業手順をまとめておきます。

1. トラックごとに、まず不要な低域・高域がないか耳で確認する。ソロで聴くのではなく、他のトラックと一緒に鳴らした状態で「この帯域、本当に必要か?」と考える 2. ハイパスフィルターをかけながら、カットオフをゆっくり上げていく。音の太さが失われ始める直前のポイントで止める 3. ローパスフィルターが必要な音色(パッド・バッキング楽器など)には、同じ要領でカットオフを下げながら調整する 4. スロープの角度を必要に応じて調整する。まずは緩やかな設定から試し、削り切れていないと感じたら急な設定に変える

なお、EQはボリュームやパンと同じく「静的なエフェクト」に分類され、信号チェーンの中でどこに置いても基本的な結果は変わらないという考え方があります。ただし歪み系(サチュレーション)と組み合わせる場合は、EQを先に置くかサチュレーションを先に置くかで音の暴れ方が変わってくるため、サチュレーションって結局何をしているの?ギターの歪みで例えると分かりやすいもあわせて読んでおくと、歪み系との組み合わせ方の理解が深まります。

エフェクト基礎シリーズとしても押さえておきたい関連知識

EQのハイパス・ローパスは、あくまで「音を削る」処理です。逆に「音を揺らす・広げる」タイプのエフェクトについては、コーラス・フランジャー・フェイザーの違いが分からない人へ。3つの「揺れ系」エフェクトを仕組みで整理すると迷わなくなるで解説しています。EQで土台となる周波数バランスを整えてから、揺れ系のエフェクトで彩りを足す、という順番で考えると、エフェクト全体の役割分担がイメージしやすくなります。

また、EQで不要な帯域を削り、音圧を最終的にまとめる段階まで進むと、今度は「マキシマイザー」「リミッター」といった、ミックスの最終段階を担当するエフェクトの話につながっていきます。この2つの違いについては、曲の音圧を上げたら音割れが怖くなった人へ。マキシマイザーとリミッターの違いをアンプのマスターボリュームで例えると迷わなくなるで詳しく解説しているので、ミックスの最終仕上げまで見据えて勉強したい人はあわせて読んでみてください。

EQの仕組みそのものについて、もう少し専門的な視点から知りたい場合は、Wikipediaのハイパスフィルタの解説ページも参考になります。電気回路としての原理まで踏み込んで書かれていますが、「境界となる周波数(カットオフ周波数)を境に信号を通す・通さないを決める」という基本の考え方は、DTMのEQでも共通しています。

まとめ

最後に、この記事のポイントを整理しておきます。

  • EQは「音を周波数帯ごとに分けて、部分的に音量を上げ下げする」道具
  • ハイパスフィルターは「低い音をカットして、高い音を通す」。ギターアンプのトーンをトレブル寄りにする効き方に近い
  • ローパスフィルターは「高い音をカットして、低い音を通す」。トーンをベース寄りにしたときの丸くこもった音に近い
  • 覚え方は「パスする(通す)対象の名前がそのままフィルター名になっている」
  • ボーカルの不要な低域をハイパスでカットすると、ベース・キックとぶつからずミックスがスッキリする
  • シンセパッドの高域をローパスで削ると、耳に痛くない・背景に馴染む音になる
  • スロープ(カットの急さ)は、自然に削りたいなら緩やかに、はっきり削り切りたいなら急に設定する
  • ハイパスとローパスを両方使うと、中域だけを残す「バンドパスフィルター」になる

ハイパスもローパスも、名前だけ見ると混乱しやすい機能ですが、動き自体はアンプのトーンノブと同じくらいシンプルです。まずは適当なトラックにハイパスフィルターを挿して、カットオフをゆっくり動かしながら、音がどう変わっていくかを耳で確認するところから始めてみてください。理屈より先に、耳で「あ、これがハイパスの音か」と体感してしまうのが、いちばんの近道です。

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