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デヴィッド・ギルモアの使用機材まとめ|Pink Floydの広大なサウンドを生むギター・アンプ・エフェクター

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1971年10月、イタリア・ポンペイ。火山灰に埋もれていた2000年前の円形闘技場に、観客を一人も入れないままPink Floydが機材を運び込んだ。「アンチ・ウッドストック」を掲げた映像作品『Live at Pompeii』で、デヴィッド・ギルモア(David Gilmour)は石畳と青空だけを相手に「Echoes」を弾く。歓声のない空間に、ギターの一音がゆっくり広がって消えていく——この「鳴っていない時間」までも音楽に組み込む感覚が、ギルモアのサウンドの原点になっている(参考:Louder)。

その後の『The Wall』ツアー(1980〜81年)では、ステージ上に本物のレンガの壁が公演中に積み上がっていき、その壁の頂上でギルモアが「Comfortably Numb」のソロを弾いた。2005年7月2日、ロンドンのハイド・パークで開かれたLive 8では、ロジャー・ウォーターズを含むオリジナルの4人が24年ぶりに同じステージに立ち、ラストの「Comfortably Numb」で再びあの伸びやかなギターが鳴った。どの場面でも共通しているのは、速いフレーズで押し切るのではなく、少ない音数・大きなビブラート・たっぷりの残響で「広い空間」を描いていることだ。

この記事では、そんなギルモアのギター・アンプ・エフェクターを、はじめて名前を聞く人にも分かるようにまとめていく。とくにギルモアの真骨頂である「間(ま)」とディレイ/リバーブ、モジュレーション(音を揺らす系)の使い方は厚めに解説する。

目次

ギター:黒いストラト「Black Strat」と赤いストラトの二本柱

ギルモアといえば、まず思い浮かぶのが通称「Black Strat(ブラック・ストラト)」。1969年製のブラックフィニッシュのFender Stratocasterで、1970年にニューヨークのManny’s Musicで購入したと言われている。「Money」「Shine On You Crazy Diamond」「Comfortably Numb」など、代表曲の多くがこのギターで録音されている(参考:Ground Guitar)。黒いピックガード、短く切り詰めたトレモロアーム、XLR出力の追加など、数十年かけて細かく改造されてきた一本だ。Fenderからは、この個体を再現した「David Gilmour Signature Stratocaster」も過去に発売されている。弦は、ギルモアが『The Wall』期から愛用しているGHSのシグネチャーセットGHS GB-DGF David Gilmour Signature(ストラト用・10-48)が知られている。

もう一本の軸が、1980年代以降のツアーでメインになっている赤いストラト。1983年製の’57リイシュー(キャンディ・アップル・レッド)で、ピックアップにはギルモア監修のEMG DG20(EMG-SAシングルコイル3基+SPCプレゼンス+EXGエキスパンダーのセット)を搭載し、ノイズが少なくヌケの良い、あの透明感のあるクリーン〜リードトーンを作っている。

ギブソンのレスポール・ゴールドトップ(1955年製)も見逃せない。「Another Brick in the Wall Part 2」のソロはこのギターで弾かれたとされ、『The Wall』ツアーでも使われた。レスポールなどミディアムスケール用の弦にはGHS GB-DGG David Gilmour Signature(レスポール用・10.5-50)がシグネチャーとして用意されている。

そしてギルモアのサウンドに欠かせないのがラップスチール。膝の上に寝かせて金属バー(スライドバー)で弾くギターで、赤いJedson、ブロンドのFender Deluxeなどを使っていると言われている。「One of These Days」「High Hopes」のスライドのうねりは、このラップスチールをオープンチューニング(弦を弾いただけで和音になる調弦)にして弾いたものだ。

アンプ:Hiwattのクリーンを軸に、歪みはペダルで作る

ギルモアのアンプは、Pink Floyd初期からずっとHiwatt DR103(Custom 100)が中心。ヘッドルームが広く、大音量でもクリーンを保ちやすいのが特徴で、歪みはアンプではなくペダルで作るのがギルモア流だ。ここが、アンプのゲインチャンネルで歪ませるカーク・ハメット(Metallica)のようなメタル系ギタリストとの大きな違いだ。

さらにHiwattと組み合わせて、Yamaha RA-200というロータリースピーカー(レスリーのように内部のスピーカーが回転して揺れを生むキャビネット)を鳴らしていた時期があり、これが「Comfortably Numb」の分厚くうねるリードトーンの一因になっている。プリアンプにはAlembic F-2Bを併用していた時期もある。近年のツアーではHiwatt Custom 50に加え、Alessandro系のブティックアンプも使っているという。

エフェクター:Big Muffの歌う歪みと、空間を作るディレイ/モジュレーション

ここがギルモアの心臓部だ。順番に見ていく。

歪み:Big Muffが生涯の相棒

ギルモアのリードトーンの核が、Electro-Harmonixのファズ(ザラッとした荒い歪み)/ディストーション「Big Muff」だ。1970年代中盤にローディー(機材担当スタッフ)のフィル・テイラーが持ち込んで以来、いわゆる“Ram’s Head”期のBig Muffを『Animals』『The Wall』で使い、「Comfortably Numb」のソロもこの系統の音だと言われている(参考:Guitar World)。後年はSovtekの“Civil War”(グリーン・ロシアン)や、ペダルビルダーのピート・コーニッシュが改造した個体なども併用している。今から近い音を探すなら、現行の定番モデルElectro-Harmonix Big Muff Piが入り口になる。コツは、サスティン(歪み量)のノブをフルにせず10〜12時あたりに抑えること。歪ませすぎないほうが、あの“歌う”ロングトーンになりやすいと紹介されている。

初期(『The Dark Side of the Moon』『Wish You Were Here』期)はDallas ArbiterのFuzz FaceやColorsound Power Boostも使っていた。Fuzz FaceはJIM DUNLOP JD-F2 FUZZ FACEとして今も定番モデルが手に入る。近年のメインのブースト/オーバードライブはBK ButlerやChandlerのTube Driverで、これを2〜3台重ねてゲインを整えていると言われている。

モジュレーション:Electric MistressとUni-Vibe

「Comfortably Numb」のスタジオ・ソロで、Big Muffの下から聞こえる金属的な揺らぎ——あれがElectro-Harmonixのフランジャー(音を揺らして飛行機のような効果を出すペダル)「Electric Mistress」だ。派手にうねらせるのではなく、フィルターマトリクスというスイッチで“止まった”揺れに固定し、それを薄くかけることでリードに独特のツヤが乗る。ヴィンテージのDeluxe Electric Mistressは生産終了しているが、現行モデルのElectro-Harmonix Stereo Electric Mistressで近い質感が得られる。

「Breathe」「Time」あたりで聞こえる、ゆっくり回転するようなうねりはUni-Vibe(ユニヴァイブ)。もともとはUnivox/Shin-eiの1960年代の機材だが、今はMXR M68 Uni-Vibeのようなコンパクト・ペダルで手軽に試せる。

ディレイ/エコー:Binson Echorecから最新デジタルまで

「ギルモア=ディレイ」と言われるほど、彼のサウンドはやまびこ(ディレイ)でできている。初期の主役はイタリア製のBinson Echorec。テープではなく金属ドラムに音を録音する方式のエコーで、「Echoes」「Time」のイントロ、「Shine On You Crazy Diamond」、「One of These Days」の刻むようなリピートはこの多ヘッド・エコーによるものだ。本物のBinsonは入手困難だが、そのドラム・エコーの雰囲気を再現した現行ペダルとしてCatalinbread Echorecがある。

ライブでの長いディレイは、かつてTC Electronic 2290、近年はProvidence DLY-4 Chrono DelayやFree The Tone Flight Timeといった高音質デジタルディレイを使っていると紹介されている(参考:Gilmourish)。付点8分の刻みや、300〜400ミリ秒あたりのディレイをリピート3〜4回で薄くかけるのが基本で、これだけでギターが一気に“広い部屋”で鳴っているように聞こえる。

「Comfortably Numb」の音を分解すると

あの伝説的なソロは、ざっくり言うと「赤/黒のストラト → Big Muff → Electric Mistress → ディレイ(約380ミリ秒・リピート3〜4回)→ クリーンなHiwatt+回転キャビネット」だと言われている。ポイントは、歪み・揺れ・やまびこを“全部薄く”重ねていること。1つ1つは主張しないが、合わさると巨大な空間になる。

ここで役に立つのが、ディレイとリバーブの役割の違いを知っておくことだ。ギルモアのサウンドは、輪郭(リズム)を作るディレイと、空気感を作るリバーブを別々にコントロールして成り立っている。それぞれの違いはディレイとリバーブの違いを解説した記事、リバーブの種類(プレート/ホールなど)はリバーブの種類の記事でかみ砕いているので、あわせて読むと理解しやすい。

なお、HiwattのクリーンやElectric Mistressのような揺れを自宅で手軽に試したいなら、アンプ/エフェクトのモデリングをまとめて積んだ機材も選択肢になる。どんなアンプモデル・エフェクトが入っているかはアンプ/エフェクトモデル一覧の記事が参考になる。

他のギタリストの機材も見てみる

同じ「ヴィンテージ寄りのロックトーン」でも、アプローチはギタリストによってかなり違う。たとえばスラッシュ(Guns N’ Roses)はレスポール+Marshallでアンプ側の歪みを土台にしている。ギルモアの「クリーンなアンプ+ペダルで作る歪み+大量のディレイ」という設計と読み比べると、同じロックでも音の作り方の幅が見えてくる。

まとめ

デヴィッド・ギルモアのサウンドは、次の要素の積み重ねでできている。

  • Hiwattなどのクリーンで音圧のあるアンプを土台にする
  • 歪みはBig Muffを中心にペダルで作る(サスティンは上げすぎない)
  • Electric MistressやUni-Vibeで薄く揺らす
  • Binson Echorec〜デジタルディレイで“やまびこ”を足し、リバーブで空気を足す
  • そして何より、音数を減らして「間」とビブラートで歌わせる

すべてを揃えるのは難しくても、まずは「クリーンなアンプ+ファズ1台+ディレイ1台」から始めて、弾くフレーズをぐっと減らしてみるだけで、かなりギルモアの世界に近づけるはずだ。まずはディレイのリピートを3〜4回・薄めに設定して、ロングトーンをゆっくり伸ばすところから試してみてほしい。

本記事の機材情報は各種インタビュー・ファンサイト・レビュー記事を参考にしています。ギルモアの機材構成は時期・ツアー・楽曲によって大きく変わるため、断定できない部分は「〜と言われている」という表現にとどめています。最新の情報は専門サイトの解説もあわせてご確認ください。

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