マーティ・フリードマンの使用機材まとめ|Megadethを離れ日本を選んだギタリストのギター・アンプ・エフェクター
大晦日のNHKホール。紅白歌合戦のステージ袖から出てきたのは、スーツでも着物でもなく、ギターケースを抱えたひとりの外国人ミュージシャンだった。日本人歌手のバックでギターを弾くその人物こそ、80年代後半にはCacophonyでシュレッドギターの世界を切り拓き、90年代にはMegadethのリードギタリストとして「Rust in Peace」「Countdown to Extinction」といった名盤を生み出した、マーティ・フリードマン(Marty Friedman)である。
なぜあのMegadethのギタリストが紅白の舞台に立っているのか。実はマーティは2003年に活動拠点を東京へ移して以降、トーク番組やバラエティ番組のMCまでこなすようになり、これまでに700本以上の日本のテレビ番組に出演してきた経歴を持つ。自身が企画・出演した音楽番組「ROCK FUJIYAMA」やテレビ東京「爆音ヘビメタさん」はYouTubeでのアーカイブ公開を通じて世界中のメタルファンの間でも話題になった(参考:Bravewords)。
Megadeth脱退の理由についてマーティ自身は「バンドに与えられるものはもう自分にはなかったし、バンドも私に与えるものがなかった」と、円満な卒業だったことを繰り返し語っている(参考:Guitar World)。もともとJ-POPを愛聴していたことが日本移住の大きな動機だったとされ、以降は日本の楽曲をインストカバーした「Tokyo Jukebox」シリーズなど、日本を意識した作品を多数手がけてきた。バンド脱退から日本語習得、そしてテレビの人気者になるまでの一連の流れを「キャリアの中で最良の決断だった」と振り返っているのも印象的で、Megadethというビッグバンドを離れる不安よりも、新しい文化に飛び込む好奇心のほうが勝っていたことがうかがえる。
Megadeth時代のヘヴィな轟音一辺倒だったサウンドは、日本移住後は歌謡曲やアニメソングのメロディーラインを取り込んだ、より歌心のあるインストゥルメンタルへと変化していった。2024年発表の最新作「Drama」もその路線の延長線上にあるアルバムで、来日公演だけでなく海外ツアーも精力的にこなしている。
そんなマーティが現在のツアーで実際に使っているギター・アンプ・エフェクターを紹介する。
ギター:Carvin→Jackson Kellyを経て、2017年に新生MF-1へ復帰
マーティのギター遍歴は大きく分けて3期ある。Cacophony時代はCarvinの「V220M」を愛用し、Megadethのオーディションテープもこのギターで録音したと言われている。Megadeth加入後はJacksonのKellyシリーズをメイン機材とし、1996年には初代シグネチャーモデル「KE1」がリリースされ、Kelly型ボディを象徴する存在の一人になった。
2000年代の日本移住後はJacksonから一時離れ、PRSのシングルカットモデルやIbanezのシグネチャー機など複数のブランドのギターを渡り歩いていた時期もあったとされる。ソロ活動の色合いが強くなり、メタル的な攻撃力よりも表現の幅を優先した結果、機材選びも自由度の高いものへ移っていったのだろう。転機は2017年。NAMM Showで新シグネチャー「MF-1」が発表され、Jacksonファミリーへの復帰が正式にアナウンスされた。現行モデルは上位機のJackson Pro Series MF-1(Purple Mirror)と、価格を抑えたX Seriesの2ライン展開。レスポールタイプのシルエットにマホガニーボディを組み合わせ、割れたガラスのようなクラックミラー塗装が目を引く。ツアーではPro Series版をメインに、トラブル時のバックアップとしてX Series版を持ち込んでいるという。
ピックアップは両モデルともEMG「MF Set」を搭載。開発者ロブ・ターナー自らが手掛けたパッシブハムバッカーで、アルニコ5マグネットと専用の巻線で仕上げられ、マーティが長年愛用してきたブラッシュドブラッククロームの見た目も再現されている。弦はD’Addario NYXL 010-046、ピックはDunlopのものを使用している。
アンプ:自身のアルバム名がそのまま付いた「Inferno」
アンプはENGL「Marty Friedman “Inferno” Signature(E766)」のシグネチャーヘッドをメインに使用している。名前の由来は2014年発表のソロアルバム「Inferno」。マーティ自身、このアルバムの音作りは「ENGL Special Edition、Powerball、Steve Morse Signature、Invaderの組み合わせで作った」と語っており、この4モデルの美味しいところを1台にまとめてほしいという要望からENGLとの共同開発が始まったという(参考:Gearnews)。開発には2年ほどかかったとされ、100W・2チャンネル仕様で各チャンネルに専用の3バンドEQとゲインブーストスイッチを搭載。リードチャンネルは相当なハイゲインに対応しており、Megadeth譲りの刻みからマーティらしい流麗なリードトーンまでを1台でカバーできる仕様になっている。
エフェクター:「エフェクトにはあまりこだわりがない」という美学
意外に思われるかもしれないが、マーティ自身はエフェクターについて「I’m not very much into effects(エフェクトにはそこまでこだわっていない)」と語っており、機材そのものよりも弾くフレーズやアイデアのほうに関心が向いていると説明している(参考:Ultimate Guitar)。
とはいえ実際のツアーボードには、長年の相棒であるテクニシャン、アラン・ソーサ氏がステージ上で手動操作する形で以下のペダルが並んでいるという。
| ペダル | 役割 |
|---|---|
| Revv G8ノイズゲート | マーティ本人いわく「最も重要なペダル」。曲ごとにアラン氏が設定を微調整する |
| MXR M87 Bass Compressor | 本来はベース用のコンプレッサーだが、ギター用として流用している |
| Maxon AF-9 Auto Filter | オートワウ的な質感を加えるフィルター系ペダル |
| MXR M234 Analog Chorus | 音の輪郭に厚みを加えるアナログコーラス |
| MXR Phase90 | 定番のオレンジ色フェイザー |
| Ibanezのチューブスクリーマー系オーバードライブ | ソロ時のブースト用(型番までは公表されていない) |
| Boss DD-500 | メインのデジタルディレイ |
これらの切り替えはBoss ES-8のエフェクトスイッチングシステムでまとめて管理し、ワイヤレスシステムにはShure GLXD6+のペダル型レシーバーを使用。電源は2台のVoodoo Lab Pedal Power 2でまかなわれているという。エフェクトの種類自体は決して多くないが、ノイズゲートの設定を曲ごとに変えるなど、細部の追い込みには相当なこだわりが感じられる構成だ。
まとめ
マーティ・フリードマンの機材構成を振り返ると、CarvinからJackson Kellyへ、そして一時期の遠回りを経て2017年に自身の名を冠したMF-1へとたどり着くギターの変遷。ENGL「Inferno」というアンプの名前1つを取っても、自身のアルバムのために組み合わせた複数モデルのサウンドを1台に凝縮したというストーリーが詰まっている。そして「こだわらない」と言いつつも、ノイズゲートの設定だけは曲ごとに微調整するエフェクターボード。どれもMegadeth時代の轟音から、日本移住後のメロディアスなソロ活動まで幅広くカバーできる懐の深さを感じさせる。
「エフェクトにはこだわらない」という彼の言葉は、機材を増やせば増やすほど良い音になるわけではない、というシンプルな真実を教えてくれる。まずはノイズゲート1台とお気に入りの歪みペダル1台から、自分の音作りを見直してみるのも良いかもしれない。
本記事の機材情報は各種インタビュー・レビューサイトの情報を参考にしています。マーティ・フリードマンの機材構成はツアーや時期によって変化するため、断定できない部分は「〜と言われている」という表現にとどめています。最新の情報は公式サイトや最新のRig Rundown記事もあわせてご確認ください。







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