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グランジって結局何なの?シアトルの轟音を名盤とあわせて解説

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「グランジ」という言葉、90年代のロックが好きな人なら一度は耳にしたことがあると思います。ニルヴァーナとかパール・ジャムとか、チェックのネルシャツを着たミュージシャンのイメージ……くらいはあるけど、いざ「グランジってどういう音楽?」と聞かれると、パンクとの違いも、メタルとの違いも、ちゃんと説明できる人は意外と少ないんじゃないでしょうか。

この記事では、グランジというジャンルがどこでどう生まれて、どんな音楽的特徴を持っているのかを整理したうえで、「とりあえずこれだけ聴いておけば、グランジの背骨みたいなものは掴める」という名盤を時代順に紹介していきます。あの独特な歪んだギターサウンドがどう作られているかにも軽く触れるので、聴くだけで終わらず「自分でもあの音を出してみたい」と思った人はぜひ最後まで読んでみてください。

目次

グランジを知るならこれだけ聴いておけばOK!名盤6選

先に結論から。グランジの成り立ちを掴みたいなら、以下の6枚を時代順に聴くのが近道です。どれも「このアルバムがあったから今のグランジ・オルタナティブロックがある」と言えるレベルの重要作なので、迷ったらここから手を付けてみてください。

時代アルバムアーティストひとことポイント
1988年『Superfuzz Bigmuff』MudhoneySub Pop発、グランジの原型そのものと言えるEP
1991年『Nevermind』Nirvanaグランジを世界中に知らしめた歴史的名盤
1991年『Ten』Pearl Jamメロディアスで骨太、グランジをスタジアム級に押し上げた一枚
1991年『Temple of the Dog』Temple of the Dog早逝した盟友への追悼から生まれた一期一会のスーパーグループ作
1992年『Dirt』Alice in Chains陰鬱でヘヴィ、グランジの「暗黒面」を体現した傑作
1994年『Superunknown』Soundgardenメタルの複雑さとグランジの生々しさを融合させた到達点

これで1988年のシアトルのインディーシーンから、1994年の全米チャート制覇まで、グランジの大きな流れをひと通り追える形になっています。次の章から、まずはグランジというジャンルそのものの成り立ちを整理していきます。

そもそもグランジってどんなジャンル?成り立ちと特徴

シアトルのインディーレーベル「Sub Pop」から生まれた

グランジは1980年代後半、アメリカ・ワシントン州シアトルのインディーロックシーンから生まれた音楽ジャンルです。中心にあったのが、Bruce PavittとJonathan Ponemanが1988年に立ち上げたレーベル「Sub Pop」。Rolling Stoneのオーラルヒストリー記事でも触れられているように、Sub PopはNirvana・Mudhoney・Soundgarden・TADといったシアトルのバンドを次々と世に送り出し、1988年末にはこれらのバンドを集めたコンピレーション『Sub Pop 200』をリリースしています。

ちなみに、グランジ以前のシアトルの重要バンドとして必ず名前が挙がるのがGreen River。このバンドは後に空中分解し、メンバーはMudhoney、Mother Love Bone(後のTemple of the Dog、Pearl Jam)へとそれぞれ分岐していきます。いわばグランジ・オルタナ系譜の共通の祖先のようなバンドです。

「グランジ」という言葉自体は皮肉から生まれた

面白いのは、「グランジ」という言葉自体、もともとは音楽ジャンルを指す言葉ではなかったという点。英語の俗語「grungy(薄汚い、みすぼらしい)」が語源で、Green River(後のMudhoney)のヴォーカルMark Armが1981年、自分のバンドを自虐的に「Pure grunge!」と評したのが最初の用例と言われています。Loudwireの記事によれば、それをSub PopのBruce Pavittが1987〜88年ごろ、Green Riverのサウンドを形容する言葉として使い始めたことで、ジャンル名として定着していったそうです。当のMark Arm自身はこの呼び方をあまり好んでいなかったとも言われています。

パンクとメタルのちょうど中間

音楽的に見ると、グランジは「パンクの荒々しさ」と「ヘヴィメタルの重さ」がちょうど中間で混ざり合ったサウンドだとよく説明されます。パンクほど速くシンプルではなく、メタルほど技巧的でもない。その「ちょうどいい鈍さ」が、シアトルの曇り空のような湿った空気感とセットで語られることが多いジャンルです。

音楽的な3つの特徴:歪んだギター、静と動、シニカルな歌詞

グランジらしさを構成する要素は、だいたい次の3つに整理できます。

  • 歪んだギターサウンド:ファズやディストーションを深くかけた、粗く分厚いギターが土台になります。綺麗に歪んだハイゲインメタルサウンドというより、もっと汚く、輪郭がぼやけた歪みが好まれる傾向があります。この「歪みの質」の作り方については、サチュレーションって結局何をしているの?の記事でギターの歪みを例に解説しているので、興味があればあわせて読んでみてください
  • ダイナミクスの落差=静と動:静かで内省的なヴァースから、サビで一気に爆発するコーラスへ。この「静と動」の落差こそがグランジ最大の武器で、Nirvanaの「Smells Like Teen Spirit」はその教科書のような曲です
  • シニカルな歌詞:明るい成功物語ではなく、疎外感・退屈・自己嫌悪といった感情をストレートに、時に皮肉を交えて歌う歌詞が特徴です。80年代の煌びやかなロックへのカウンターとしての側面もありました

ちなみに、歪んだギターが主役のイメージが強いグランジですが、実はコーラスやフランジャーといった「揺れ系」のエフェクトも重要な役割を果たしています。代表例がNirvanaのKurt Cobain。「Come As You Are」のイントロの、あの水の中で鳴っているようなギターの音色は、Electro-Harmonix Small Cloneというアナログコーラスペダルによるものです。歪みだけでなく、こうした揺れ系のエフェクトが加わることで、グランジ特有の「濡れたような質感」が生まれています。揺れ系エフェクトの仕組みについては、コーラス・フランジャー・フェイザーの違いが分からない人へでも整理しているので、こちらもぜひ。

名盤を1枚ずつ深掘りしてみる

ここからは、先ほど紹介した6枚を1枚ずつ掘り下げていきます。それぞれ「なぜ重要なのか」「何を聴けばそのアルバムの凄さが分かるのか」を意識してまとめました。

Mudhoney『Superfuzz Bigmuff』(1988)

Sub Popから1988年にリリースされたMudhoneyのデビューEP。プロデュースはシアトルの音を作り上げた立役者の一人、Jack Endino。タイトルの「Superfuzz」「Bigmuff」はどちらもファズペダルの名前で、その名の通りファズの塊のような荒々しいギターサウンドが全編を貫いています。

Mudhoneyの前身バンドGreen Riverは、先ほど触れた通りグランジという言葉が定着するきっかけになったバンド。その意味で、このEPはグランジという音楽ジャンルの「原型」がもっとも純粋な形で聴ける一枚と言えます。まだ後のNirvanaのような洗練さはありませんが、その分、荒削りなエネルギーがダイレクトに伝わってきます。

Nirvana『Nevermind』(1991)

1991年9月24日リリース、Butch Vigプロデュースによる、Nirvanaのメジャー2作目。1曲目「Smells Like Teen Spirit」が空前のヒットとなり、グランジという言葉を一気に世界共通語にしたアルバムです。

それまでアメリカのチャート1位を独占していたマイケル・ジャクソンを引きずり下ろしたという逸話も有名で、この一枚をきっかけにロック業界の勢力図そのものが変わりました。静かなヴァースから爆発的なコーラスへというダイナミクスの落差は、その後のオルタナティブロック全体のお手本になった構成です。「In Bloom」「Come As You Are」「Lithium」など、シングル曲以外の完成度も非常に高いアルバムです。

Pearl Jam『Ten』(1991)

1991年8月27日リリース、Pearl Jamのデビューアルバム。Nirvanaと同じ1991年のリリースながら、方向性はかなり対照的です。Eddie Vedderの朗々としたヴォーカルと、Mike McCready・Stone Gossardによる叙情的なギターワークで、グランジをよりメロディアスで劇場的な方向に押し広げました。

「Alive」「Even Flow」「Jeremy」といった楽曲は、荒々しさよりもドラマ性で聴かせるタイプの曲作り。Nirvanaが「グランジのパンク的側面」を代表するなら、Pearl Jamは「グランジのロックオペラ的側面」を代表する一枚だと言えます。

Temple of the Dog『Temple of the Dog』(1991)

1991年4月にリリースされた、一度きりの限定プロジェクトによる唯一のアルバム。SoundgardenのChris Cornellが、ルームメイトでもあった盟友、Mother Love BoneのヴォーカルAndrew Woodを1990年に亡くしたことをきっかけに制作した追悼作品です。

制作にはMother Love Boneの元メンバーStone GossardとJeff Amentに加え、当時まだ無名だったEddie Vedderもバックボーカルとして参加。代表曲「Hunger Strike」ではCornellとVedderが掛け合いのようにヴォーカルを分け合っています。翌年、Pearl JamとSoundgardenがそれぞれブレイクしたことで、このアルバムは「後から振り返ると恐ろしく豪華だったことが分かる一枚」として再評価されました。シアトルのミュージシャンコミュニティの結束の強さがよく分かる作品でもあります。

Alice in Chains『Dirt』(1992)

1992年9月29日リリース、Alice in Chainsのセカンドアルバム。他のグランジ系バンドと比べても、メタル由来のヘヴィネスと、薬物依存や鬱といった重いテーマを扱う歌詞が際立つ一枚です。

「Them Bones」「Rooster」「Would?」など、Jerry CantrellとLayne Staleyのツインヴォーカルによる独特のハーモニーも大きな聴きどころ。明るさのかけらもない陰鬱なムードで一貫していて、グランジという言葉に「暗さ」「重さ」のイメージを結びつけた作品と言っても過言ではありません。グランジの「静と動」というより「陰と陰」を突き詰めたような、異色の存在感を放つアルバムです。

Soundgarden『Superunknown』(1994)

1994年3月8日リリース、Soundgardenの4作目にして、全米ビルボードチャート1位を獲得した商業的な到達点。プログレッシブなメタルの複雑さと、グランジらしい生々しいエネルギーが高いレベルで融合しています。

変拍子を多用した「Spoonman」や「My Wave」、後に大ヒットする「Black Hole Sun」など、収録曲のバラエティも豊か。Chris Cornellの圧倒的な歌唱力も相まって、単なる「グランジバンドの一枚」を超えたロックアルバムとしての完成度を持っています。1994年というグランジムーブメント後期に、ここまで攻めた作品が全米1位になったこと自体が、当時のシアトル勢の勢いを物語っています。

まとめ

グランジは、1980年代後半のシアトルという一つの街のインディーシーンから生まれ、Sub Popというレーベルとその周辺のミュージシャンたちのつながりによって育っていった音楽です。パンクの荒々しさとメタルの重さを併せ持ち、歪んだギター・静と動の落差・シニカルな歌詞という3つの要素が、あの独特な質感を作り上げています。

今回紹介した6枚を時代順に聴いていくと、Sub Popの一インディーEPから、全米チャートを塗り替えるまでの、シアトルというシーンそのものの成長の軌跡が見えてくるはずです。まずは気になった1枚から、実際に聴いてみてください。あのギターの歪みが気になった人は、サチュレーションの記事もあわせてどうぞ。他のジャンルの成り立ちも知りたくなったら、テクノって結局何なの?の記事も覗いてみてください。

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