スイープピッキングで音が濁ってしまう人へ。基本フォームと段階的な練習法を徹底解説
速弾き系のギタリストが、まるで弦を「なで下ろす」ように弾いて分散和音(アルペジオ)を一気に鳴らすあのフレーズ。見ているだけでテンションが上がりますが、いざ自分で真似してみると「なんかジャラーンと濁った音になる」「思ってたのと全然違う」となりがちな奏法でもあります。それが今回のテーマ、スイープピッキングです。
この記事では、スイープピッキングにまつわる疑問を1つずつ拾いながら、ピックの角度・右手のミュート・左手のロール奏法という3つの基本フォームと、挫折しにくい段階的な練習法を解説していきます。
Q. スイープピッキングって結局どういう奏法なの?
A. 一言でいうと、ピックを1本の弦につき1回、隣の弦へ向かって連続的に振り下ろす(または振り上げる)ことで、複数の弦をなぞるように弾き、分散和音(アルペジオ)を鳴らす奏法です。
普段のオルタネイトピッキングが「ダウン・アップ・ダウン・アップ」と弦ごとに往復するのに対して、スイープピッキングはピックが弦の上を一方向に滑っていくイメージに近いです。たとえば3本の弦を下から上に向かって弾くとき、ピックは「ダウン・ダウン・ダウン」と同じ向きで隣の弦へ移動し続けます。
ここで大事なのは、スイープピッキングは”和音を一気にジャラーンと弾く奏法ではない”という点です。右手はコードストロークのような動きをしていても、実際に響かせたいのは「1音ずつ順番に鳴る単音の粒」。この前提を知っているかどうかで、後述するミュートの重要性の理解度がまったく変わってきます。
Q. ピックの角度はどうすればいいの?
A. 弦に対してピックを真っ直ぐ当てるのではなく、進行方向に向かって少し角度をつけて、弦を”押し抜く”ように当てるのがポイントです。
下向き(ダウン)に弾き進めるときは、ピックの先端がやや下(床の方向)を向くように傾けると、ピックが次の弦にスッと滑り込みやすくなると言われています。逆に上向き(アップ)に弾き上がるときは、ピックの先端がやや上を向く角度にして、同じように弦から弦へ滑らせる感覚を意識します。Guitar World
ポイントは、1本ずつ弦を「弾いて→止めて→また弾く」のではなく、1つの滑らかな動きの中で複数の弦を通過していくことです。手首を固めて力任せに動かすと引っかかりやすくなるので、力を抜いて「重力に逆らわず滑らせる」くらいの感覚で振り下ろす練習から始めるとイメージが掴みやすいはずです。
Q. なぜ音がミュートされずに濁ってしまうのか?
A. 一番の原因は、弾いていない弦・すでに弾き終わった弦がミュートされずに響き続けてしまうことです。
スイープピッキングは構造上、右手のピックがほぼコードストロークと同じ動きをするため、左手で押さえている弦以外の開放弦や、すでに鳴らし終えた弦がそのまま響いてしまうと、単音のアルペジオのはずが和音(コード)のようにジャラーンと濁って聞こえてしまいます。
つまりスイープピッキングの上達とは、「正しい音を鳴らす技術」よりも「余計な音を止める技術」を磨くことだと言われています。ここから先の右手のミュート・左手のロール奏法は、まさにこの「濁りをどう防ぐか」のための具体的なテクニックです。
Q. 右手のミュートは具体的に何をすればいいの?
A. ピッキングしていない側の弦(まだ弾いていない低音弦や、ピック側から見て奥の弦)を、ピッキングハンド(右手)の側面や、余っている指の腹で軽く触れて振動を止めるのが基本です。
具体的には、以下のような役割分担で右手を使います。
- ピックを持つ手の付け根(手のひらの小指側)を、まだ弾いていない低音弦に軽く触れさせておく
- ピックを持っていない指(中指・薬指・小指など)を、次に弾く予定のない弦にそっと乗せておく
ここでのコツは、「ミュートする」というより「触れておく」くらいの軽さで十分だということです。強く押さえ込む必要はなく、弦の振動を止められる程度に軽く触れているだけで、余計な音の響きはかなり抑えられます。
Q. 左手のロール奏法って何?どうやるの?
A. ロール奏法とは、1本の指で複数の弦を押さえながら、ピッキングの動きに合わせて指の角度を少しずつ変えていくことで、前の弦をミュートしつつ次の弦の音をきれいに出す技術です。
やり方の目安は次の通りです。
1. 最初の弦は、指の”先端(指先)”でピンポイントに押さえて音を出す 2. ピックが次の弦に移ったら、指の第一関節を軽く曲げて(アーチさせて)、指の腹(やや厚みのある部分)を次の弦に当てて音を出す 3. このとき、直前に押さえていた弦には指の先端がわずかに触れたままになり、自然とミュートがかかる 4. 弦を移動するたびに、この「指先→指の腹」の角度の変化を繰り返していく
つまり指1本が「押さえる役」と「ミュートする役」を同時にこなしているイメージです。Guitar Worldによれば、この指の角度をコントロールする動きがロール奏法の核心で、シュレッド系ギタリストの間でも習得に時間がかかる技術の1つとして知られていると言われています。慣れないうちは指がつりそうになりますが、これは左手だけを取り出して単独練習することで習得しやすくなります。
Q. よくある失敗ってどんなもの?
A. 特に初心者がつまずきやすいポイントは次の3つです。
- 音の粒が揃わない:1音ずつのタイミングがバラバラになり、リズムとして聴いたときにガタガタして聞こえる。ピッキングの速度にムラがあることが多い
- 隣の弦をミュートできず濁る:左手のロールが間に合わず、前の弦を押さえたまま次の弦に移ってしまい、2つの音が同時に響いてしまう
- 力みすぎてピックが引っかかる:弦から弦への移動時にピックを強く押し込みすぎて、スムーズに滑らずガリッと引っかかる感触が出てしまう
これらはどれも、「速く弾こうとして先に力とスピードを求めてしまう」ことが根っこの原因になっているケースが多いと言われています。実際、多くの教則記事でも「毎音がはっきり分離して聞こえるかどうかを最優先し、テンポを上げるのはそれができてから」という順番が推奨されています。
Q. どのくらい練習すれば弾けるようになるのか?段階的な練習法は?
A. 個人差はありますが、いきなり5〜6弦のフルアルペジオを目指さず、3弦だけの小さいアルペジオから始めるのが遠回りに見えて実は一番の近道だと言われています。
おすすめの練習ステップは次の通りです。
1. ピッキングだけの素振り:左手を使わず、右手のピッキング動作(振り下ろす・振り上げる感覚)だけをゆっくり繰り返す 2. 3弦アルペジオ・超スロー:メトロノームを40〜60BPM程度に設定し、1音ずつはっきり鳴らすことだけを目標に、3本の弦だけのアルペジオを弾く 3. 左手のロールを単独練習:ピッキングを止めて、左手の指の角度を変える動き(押さえる→ロールしてミュート)だけを繰り返す 4. 3弦アルペジオを両手で合わせる:ステップ2と3が別々にできるようになったら、ゆっくりのテンポで両手を合わせる 5. 弦数を増やす・テンポを上げる:3弦のアルペジオがきれいに鳴らせるようになってから、4弦・5弦と徐々に本数を増やし、メトロノームのテンポも少しずつ上げていく
大事なのは、テンポを上げるのは「今のテンポで完璧に弾けたときだけ」というルールを自分に課すことです。音が少しでも濁ったり粒が揃わなかったりする状態でテンポを上げてしまうと、そのクセごと体に染み付いてしまい、後から直すほうが大変になると言われています。焦らず、3弦アルペジオがクリーンに鳴らせるようになるまでじっくり付き合うつもりで取り組んでみてください。
まとめ
スイープピッキングは、ピックを一方向に滑らせて複数弦のアルペジオを鳴らす奏法ですが、その本質は「正しく鳴らす技術」よりも「余計な音を止める技術」にあります。
- ピックは弦に対して角度をつけて、弦から弦へ滑らせるように当てる
- 右手は、弾いていない弦に軽く触れてミュートしておく
- 左手は指の角度を変える「ロール奏法」で、前の弦をミュートしながら次の弦を押さえる
- よくある失敗は「音の粒が揃わない」「隣の弦をミュートできず濁る」「力みすぎて引っかかる」の3つ
- 練習は3弦アルペジオ・超スローテンポから始め、クリーンに鳴らせてから弦数とテンポを上げていく
見た目は派手な奏法ですが、分解してみると「ピックの角度」「右手のミュート」「左手のロール」という3つの地味な技術の積み重ねです。まずは3弦だけの小さいアルペジオを、メトロノームでゆっくり、1音ずつクリアに鳴らすところから始めてみてください。







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