カーク・ハメットの使用機材まとめ|Metallicaの轟音を生み出すギター・アンプ・エフェクター
2014年、あるヴィンテージギターのディーラーのもとに、1959年製Gibson Les Paulが持ち込まれた。かつてFleetwood Macのピーター・グリーンが弾き、その後Gary Mooreが約25年間弾き続けた、通称「Greeny(グリーニー)」と呼ばれる伝説の1本だ。ピックアップの配線がわざと逆向きに取り付けられていて、レスポールなのにどこかストラトキャスターを思わせる、枯れた中音域の効いた音が出るという世界に1本だけの個体である。
このギターの噂を以前から知っていたのが、Metallicaのリードギタリスト、カーク・ハメット(Kirk Hammett)だった。1億円を優に超える値札を見て「自分には縁のない話」と思っていたそうだが、オーナーが手放すことを決めたタイミングで話が転がり込み、実際に手に取った瞬間「これはもう返せない」と直感。わずか1時間ほどでその場購入を即決したという(参考:Guitar.com)。実はバンドメイトのジェームス・ヘットフィールドも一度は購入を打診されていたが、「値段が法外だった」という理由でそのときは見送っていたというエピソードも残っている(参考:Guitar World)。
このエピソードからも分かるとおり、カーク・ハメットは単に「シグネチャーモデルを弾いている人」ではなく、1本1本のギターの背景や鳴りにまで強いこだわりを持つコレクターでもある。今回は、そんなカーク・ハメットが実際に使っているギター・アンプ・エフェクターを、初めて名前を聞く人にも分かりやすいようにまとめて紹介する。
ギター:ESPシグネチャーとヴィンテージ・レスポールの二刀流
カークのメインギターといえば、長年パートナーシップを結んでいるESPのシグネチャーシリーズだ。フラッグシップの「KH-2」はESPカスタムショップ(日本製)による手仕事のギターで、ネックスルー構造・アルダーボディ・24フレットのスキャロップ加工(17〜24フレットの指板が浅く削られていて、チョーキングがしやすくなる加工)といった仕様が特徴。指板には彼のトレードマークである「スカル&ボーンズ」インレイが入っている。
エントリーからミドルクラス向けには、LTDブランドの「KH-602」「KH-202」があり、KH-2とほぼ同じルックス・仕様をより手の届きやすい価格帯で再現している。最新モデルの「KH-V」はコリーナ材のフライングV型ボディに、なめらかな握り心地の薄めのネックを組み合わせた新しいシグネチャーだ。いずれのモデルもピックアップにはカーク監修のEMG KH20(EMG81ハムバッカー+Sシングルコイル2発)や、上位モデルのEMG KH21「Bone Breaker」が搭載され、タイトなハイゲインサウンドとハーモニクスの伸びを両立させている。
そしてもう1本、絶対に外せないのが先ほど紹介した「Greeny」だ。カークはこのギターを飾っておくのではなく、実際にレコーディングやライブで使用しており、ESPのシグネチャーとは対照的な、枯れた生々しいトーンを楽曲に取り入れている。ちなみにGary Moore所有だったもう1本の1958年製レスポールも別に所有しており、ゲインを足すとチェーンソーのような歪みが出るその個性にすっかり惚れ込んでいると語っている(参考:MusicRadar)。ESPのモダンなハイゲイン機と、時代を超えたヴィンテージ・レスポール。この2つを行き来できるのが、カーク・ハメットのギターの音の幅を支えている。
アンプ:Marshallから始まり、Mesa/Boogie、そして自身のRandallシグネチャーへ
カークのアンプ遍歴は、Metallicaの音楽的な変化ともリンクしている。初期の『Ride the Lightning』(1984年)はMarshall JCM800をフルテンにした素直なハイゲイン構成だったが、『Master of Puppets』(1986年)ではMesa/Boogie「Mark IIC+」をプリアンプ代わりに使い、そこからJCM800のパワーアンプ部を鳴らすという組み合わせで、あの分厚いリフの音を作り上げたとされる。90年代後半の『Load』『Reload』期にはMesa/Boogie「Dual Rectifier」「Triple Rectifier」系へ移行し、低域が太くミッドが締まったモダンなハイゲインサウンドに。そして近年のツアーでは、自身のシグネチャーヘッドRandall「KH103」(3チャンネル・120W)をメインに使っているという。Marshallの暖かい歪みとMesa/Boogieの圧縮感を経て、最終的に自分の名前を冠したヘッドに辿り着いたのが、カークのアンプ選びの大きな流れだ。
| アンプ | 特徴 |
|---|---|
| Marshall JCM800 2203 | 初期Metallicaの歪みの土台となったハイゲインヘッド |
| Mesa/Boogie Dual Rectifier | 90年代以降の太く締まったハイゲインサウンドを担当 |
| Randall KH103 | カーク自身のシグネチャーヘッド。現在のメインアンプ |
| Randall KH412-V30 | KH103と組み合わせるシグネチャーキャビネット |
| Randall KH-15 | 自宅練習用の15Wシグネチャーコンボ。気軽に音を近づけたい人向け |
エフェクター:ワウペダルへの深い愛と、あくまでシンプルな歪み系
カークのエフェクターボードを語るうえで欠かせないのが、ワウペダルへの愛着だ。ソロの至るところで聴こえるあの泣き叫ぶようなトーンは、DunlopのシグネチャーモデルKH-95 Kirk Hammett Cry Baby Wahによるもの。カーク自身のEQ・ボリューム・トーン設定をもとに、Dunlopのエンジニアが長年のツアーで培われたセッティングを忠実に再現したモデルだと紹介されている(参考:Jim Dunlop公式)。
一方で、歪み系のペダルについては意外にもシンプルだ。カーク自身、ディストーション系のペダルをあまり多用しないタイプで、アンプ本来のオーバードライブチャンネルをメインに使いつつ、そこに軽くブーストをかける程度の使い方が中心だと言われている。ブースターの定番として長年使われているのがIbanez TS9だ。Metallicaは低音を削ったスクープドミッドのバンドサウンドで知られるが、その中でカークがTS9を踏むとミッドがぐっと持ち上がり、音が一気に前に出てくる。これは「カーク・ハメット・トリック」とも呼ばれる定番の使い方で、TS9と兄弟モデルにあたるTS808も、同系統のブースターとして選択肢に挙がることがある。アンプの歪みの手前でわずかに音を押し出すことで、リード時の抜けを良くする使い方である。
そのほか、フランジャーにはMXR EVH117 Flangerを採用し、ソロの一部でうねりのあるサウンドを加えているとされる。近年はカーク自身が立ち上げたエフェクターブランド「KHDK Electronics」からオーバードライブ「Ghoul Screamer」やディストーション「Dark Blood」といった自身の名を冠したペダルも発表しており、機材選びだけでなく機材作りにも興味の幅を広げている。
まとめ
カーク・ハメットの音作りは、「モダンなESPシグネチャー×自身のRandallヘッド」というハイゲイン軸を土台にしつつ、そこに「Greeny」のような歴史あるヴィンテージ・レスポールの生々しさを織り交ぜているのが大きな特徴だ。アンプもMarshall→Mesa/Boogie→自身のRandallシグネチャーと、時代とともに軸足を移しながらも、常にワウペダルへの強いこだわりだけは一貫している。
すべての機材を揃えるのは難しくても、「歪みはアンプ本体で作り、ペダルは軽いブーストとワウに絞る」という考え方自体は、自分のギターサウンド作りにもそのまま応用できるはずだ。まずは手元のアンプのゲインチャンネルとワウペダル1台の組み合わせから、カークっぽさを探ってみるのも面白いかもしれない。
本記事の機材情報は各種インタビュー・レビューサイトの情報を参考にしています。カーク・ハメットの機材構成は時期やツアーによって変化するため、断定できない部分は「〜と言われている」という表現にとどめています。最新の情報は公式サイトや最新のRig Rundown記事もあわせてご確認ください。







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