V Collection 11の隠し玉「Pure LoFi」の実力とは?2026年のLo-Fi制作を変える!

「Lo-Fiなビートを作りたいけど、サンプルを貼るだけじゃ物足りない……」。そんなクリエイターの悩みに、Arturiaが意外な答えを出しました。2025年4月にV Collection 11とともに登場した「Pure LoFi」は、単なる劣化エフェクトではありません。
サンプラー、モデリング音源、そして強力なノイズエンジンを統合した、世界初の「Lo-Fi専用シンセサイザー」です。
本記事では、Tape MELLO-FIとの違いから、SP1200やカセットテープを再現した「美味しい劣化」の秘密、そしてLofi Hip Hop即戦力の音作りテクニックまで、その全貌を1万文字超で徹底レビューします。
Arturia Pure LoFi:ただのエフェクトではない「不完全さ」を奏でるシンセサイザー


「Lo-Fi(ローファイ)」。 その言葉は、もはや単なる「音質が悪い」という意味を超え、現代音楽における一つの巨大なジャンル、そして美的感覚(Aesthetics)として定着しました。
これまで、DAW(デスクトップ・ミュージック)の世界でLo-Fiを作る方法は、大きく分けて2つありました。 一つは、既存のループ素材を使うこと。そしてもう一つは、綺麗なシンセの音に「劣化系エフェクト(RC-20やVinylなど)」をかけること。
しかし、2025年4月。アナログシンセのエミュレーションで世界をリードしてきたArturiaが、その常識を覆す製品をリリースしました。V Collection 11の目玉として登場した、Arturia Pure LoFiです。
「またLo-Fiエフェクト?」と思った方、ちょっと待ってください。 これはエフェクトではありません。「最初から汚れた音が出る」シンセサイザーなのです。
本記事では、この「不完全さを奏でる楽器」の全貌を、1万文字を超えるボリュームで徹底解剖します。単なるテープシミュレーターとは一線を画す、その深淵なるサウンドデザインの世界へようこそ。
2025年の衝撃:なぜArturiaは今「Lo-Fi専用シンセ」を作ったのか?
エフェクトを「かける」のではなく「鳴らす」という発想
これまでのLo-Fi制作における最大の矛盾。それは、「高音質なソフトシンセで作った音を、わざわざ後から壊している」という点でした。もちろんそれは有効な手法ですが、どうしても「作った音にフィルターを被せた」ような、後付け感が残ることがありました。
Pure LoFiの発想は根本的に異なります。 「最初からSP1200のサンプラーを通ったような音がしたら?」 「最初からカセットテープが伸びたような揺らぎを持ったオシレーターがあったら?」
そう、これは音の入り口(Source)からLo-Fiであることを目指したインストゥルメントなのです。これにより、演奏のダイナミクスとノイズが有機的に絡み合い、まるで古いレコードからサンプリングしてきたかのような、「説得力のある汚れ」が生まれます。
3つの音源エンジンが織りなす「美しき劣化」の世界
Pure LoFiの心臓部には、3つの異なるサウンドエンジンが搭載されています。これらは並列(レイヤー)で鳴らすことができ、複雑なテクスチャを生み出します。
Engine 1: Realistic Instrument – 生楽器のサンプリングに「空気」を混ぜる
一つ目は、ピアノ、エレピ、ギター、ハープといったアコースティック楽器のマルチサンプルを収録したエンジンです。 しかし、ただ綺麗に録音されたものではありません。Arturiaのサウンドデザイナーたちが、あえて少し古いマイクを使ったり、テープを通して録音したりといった「味付け」が施されています。
例えば「Felt Piano」のプリセットを選んでみてください。鍵盤を弱く弾くと、ハンマーが弦に触れるかすかなノイズだけが聴こえ、強く弾くと、少し歪んだような温かい音色が響きます。この「生楽器の不完全さ」こそが、Lo-Fi Hip Hopのトラックに命を吹き込むのです。
Engine 2: Creative Sampler – 自分のサンプルを「汚して」使う快感
二つ目は、ユーザーが自由にサンプルを読み込めるサンプラー・エンジンです。 手持ちのドラムループやボーカルチョップをここに放り込むだけで、Pure LoFiの強力な劣化回路を通すことができます。
特筆すべきは、サンプルの「ストレッチ」アルゴリズムの質感です。初期のデジタルサンプラー(Akai S950など)のような、ピッチを下げた時の独特の「荒れ(Aliasing Noise)」までもが再現されています。今のDAWの高品位なタイムストレッチでは出せない、あの「ザラッとした質感」が、ここにあります。
Engine 3: LoFi Oscillator – アナログとデジタルの狭間で揺れる波形
三つ目は、シンセサイザーのオシレーターです。しかし、これまた普通ではありません。 「Saw(ノコギリ波)」や「Square(矩形波)」といった基本的な波形に加え、「VHS Wiggle(ビデオテープの揺れ)」や「Dusty Organ(埃をかぶったオルガン)」といった、名前だけで音が想像できるようなカスタム波形が130種類以上収録されています。
このオシレーターは、常に僅かにピッチが揺らいでおり、静的な音が一つもありません。コードを弾いて、何もしなくても、音が「生きて」います。Vaporwaveのような、ドリーミーで不安定なパッドサウンドを作るなら、このエンジンの独壇場です。
SP1200からカセットテープまで:徹底的にこだわり抜かれた「劣化プロセス」
Pure LoFiが真に輝くのは、音源エンジンを通った後の「劣化(Degradation)」の工程です。Arturiaはここに、同社のエフェクト・プラグインで培った技術の粋を集めています。
6つのDegradation Mode:SP1200のジャリジャリ感からMPCの太さまで
メインパネルの中央に鎮座する「LoFi Processor」では、6つの時代を象徴する劣化モードを選択できます。
- Golden Age (SP1200系): 12bitサンプラー特有の、ザラザラとした質感と、太い中低域。ドラムやベースに最適。
- Velvet Frost (VHSテープ): 高域が丸まり、音が滲むようなソフトな劣化。パッドやキーボードに。
- Vintage Glow (真空管): 暖かいサチュレーションと、偶数次倍音の付加。ボーカルやギターに温もりを与えます。
- Dim Memories (カセットテープ): 不安定なピッチの揺れ(Wow/Flutter)と、ヒスノイズ。まさにLo-Fiの王道。
- Cathodic Tube (ブラウン管テレビ): 独特のハムノイズと、帯域制限されたチープな音質。飛び道具的に。
- Fuzzy Line (壊れた回路): ビットクラッシャーに近い、破壊的な歪みとデジタルノイズ。
これらは単なるEQカーブだけではなく、各ハードウェアの回路挙動(サンプリングレートやビット深度の変化、コンプレッション感)まで再現されています。プリセットを選ぶだけで、トラックの年代が1980年代や90年代にタイムスリップします。
こだわりのNoise Engine:190種類以上の「環境音」が楽曲に命を吹き込む
「Lo-Fiにはノイズが必要だ」。それは周知の事実ですが、Pure LoFiのノイズエンジンは一味違います。 単なる「サーッ」というホワイトノイズだけでなく、190種類以上もの「テクスチャ」が用意されているのです。
- Vinyl Crackle: レコードのパチパチ音。
- Rain: 窓の外で降る雨の音。
- City Stream: 遠くで聴こえる街の喧騒。
- Forest: 鳥のさえずりや風の音。
- Mechanical: カセットデッキのモーター音や、ハム音。
これらは、演奏に合わせてトリガー(発音)させることも、常にバックグラウンドで流し続けることも可能です。さらに「Ducking」機能を使えば、キックが鳴った瞬間だけノイズを下げる、といったサイドチェインのような処理もワンノブで設定できます。これにより、ノイズが楽曲のグルーヴを邪魔することなく、空気感だけを演出できるのです。
フィルターとEQ:Lo-Fi専用設計だからできる「こもらせ方」
フィルターも、通常のシンセとは異なるチューニングが施されています。 「Clean」「Analog (SEM)」「LoFi (MS-20)」の3タイプから選べますが、特筆すべきはやはり「LoFi」フィルターです。
レゾナンスを上げると、綺麗に発振するのではなく、少し汚く歪みます。そしてCutoffを下げていくと、音が単に暗くなるだけでなく、少し「遠く」に行くような感覚が得られます。これは、単に高域を削るだけでなく、位相や倍音構成もコントロールしているからでしょう。「こもっているのに、抜けてくる」。そんな魔法のようなEQ処理が、フィルターノブ一つで実現できます。
Tape MELLO-FIとは何が違う?目的に合わせた使い分け術
Arturiaユーザーなら、「Tape MELLO-FIと何が違うの?」と思うはずです。 結論から言えば、「Tape MELLO-FIはエフェクト」であり、「Pure LoFiは楽器」です。
Tape MELLO-FIとの決定的な違い:「かける」のではなく「鳴らす」
Tape MELLO-FIは、完成したオーディオ・トラック(例えばピアノのWAVデータ)に対して、テープの質感を付加するためのプラグインです。ミックスの段階で「ちょっと味付けしたいな」という時に使います。
一方、Pure LoFiはシンセサイザーです。MIDIキーボードを弾いて、ゼロから音を作るものです。 もちろん、Pure LoFiで作った音にさらにTape MELLO-FIをかけることも可能ですが、Pure LoFi単体で「音源としての音作り」と「質感の劣化」が完結しているため、基本的にはこれ一台で完結します。
もしあなたが、「既存のループ素材の音を古くしたい」ならTape MELLO-FIを。 「自分でメロディを弾いて、オリジナルのLo-Fiトラックを作りたい」ならPure LoFiを選んでください。


導入ガイド:V Collection 11での位置づけとCPU負荷
RC-20 Retro Colorなどの他社製品との比較
Lo-Fiプラグインの王者と言えばXLN Audioの「RC-20 Retro Color」ですが、Pure LoFiはこれと競合するものではなく、共存するものです。 RC-20はあくまでエフェクト・ラックであり、音源ではありません。
Pure LoFiで音の骨組み(Source)を作り、RC-20で最終的な味付け(Mastering)をする。このコンビネーションは最強です。しかし、Pure LoFi内蔵の劣化機能が非常に優秀なため、「Pure LoFiを使う時だけは、RC-20を外してもいいかも」と思わせるほどのクオリティを持っています。
ジャンル別活用術1:Lofi Hip Hopにおける「ヨレたピアノ」の作り方
- Engine 1で「Upright Piano」を選択。
- Degradation Modeを「Dim Memories(カセットテープ)」に設定。
- Wobble(ピッチの揺れ)を多めに上げ、Wear(テープの擦り切れ)を少し足す。
- Noise Engineで「Vinyl Crackle」を足し、Duckingをオンにする。
これだけで、あのYouTubeのライブ配信で流れているような、哀愁漂うヨレたピアノサウンドが完成します。ポイントは、少し強めにWobbleをかけること。Pure LoFiの揺れは音楽的なので、かけすぎても不快になりません。
ジャンル別活用術2:アンビエントにおける「ざらついたパッド」の構築
- Engine 3(Oscillator)で「VHS Wiggle」波形を選択。
- Engine 2(Sampler)に「Field Recording(森の音など)」をレイヤー。
- Degradation Modeを「Velvet Frost」にし、高域を滲ませる。
- 内蔵のReverb(例えば「Huge Space」)を深くかける。
これで、ブライアン・イーノやボーズ・オブ・カナダのような、記憶の底にあるようなノスタルジックなアンビエント・パッドが作れます。
CPU負荷と動作環境:M1/M2 Macでのパフォーマンス
これだけ複雑な処理をしているとCPU負荷が気になりますが、Arturiaの最新エンジンだけあって最適化は進んでいます。 M1 MacBook Airで試したところ、複数のインスタンスを立ち上げても動作は軽快でした。ただし、Realistic Instrumentエンジン(サンプラー)を使うため、メモリ(RAM)はそれなりに消費します。4GBモデルでも動きますが、快適に使いたいなら8GB以上、できれば16GBを推奨します。
購入前に知っておくべきFAQ
Q: 単体購入はできますか? A: はい、可能です。しかし、V Collection 11にバンドルされているため、他のシンセ(Jup-8 V4やJun-6 Vなど)も使う予定があるなら、バンドルでの購入が圧倒的にお得です。
Q: オリジナルのサンプルは読み込めますか? A: はい、Creative SamplerエンジンにWAVやAIFFファイルをドラッグ&ドロップするだけで読み込めます。自動でピッチ検出もしてくれるので、非常に便利です。
まとめ:不完全であることの「完璧」さ
デジタルオーディオは、完璧を目指して進化してきました。ノイズを無くし、歪みを減らし、正確なピッチを奏でること。 しかし、私たちが心動かされる音楽には、いつだって「隙」や「汚れ」がありました。
Arturia Pure LoFiは、その「愛すべき不完全さ」を、現代の技術で完璧にコントロールできるようにしたツールです。 それは懐古主義ではありません。ノイズやヨレを「音楽的な表現」として使う、新しい時代の楽器なのです。
もしあなたが、自分のトラックに「温もり」や「人間味」が足りないと感じているなら、ぜひPure LoFiを試してみてください。 完璧に整えられたグリッドの上で、少しだけヨレたその音が鳴った瞬間、あなたの楽曲は魔法にかかったように色づき始めるはずです。
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