エディ・ヴァン・ヘイレンの使用機材まとめ|自作フランケンシュタインとタッピング奏法が生んだVan Halenのサウンド
1970年代半ば、無名のバンドマンだったエディ・ヴァン・ヘイレン(Eddie Van Halen)は、お金に余裕がなかった。欲しいギターの音は「フェンダーの弾きやすいネック」と「ギブソンの太いハムバッカーの音」を両方兼ね備えたものだったが、そんな都合のいいギターはどこにも売っていない。それなら自分で作ればいい。中古のアルダーボディ、フェンダー風のネック、知人のギターから外したギブソンのハムバッカーを1個、そしてパーツ屋で見つけた安価なパーツを寄せ集め、赤・黒・白のペンキを大胆に塗り重ねて1本のギターを組み上げた。これが、のちに「フランケンシュタイン(通称:フランケンストラト)」と呼ばれることになる、ロック史上もっとも有名な自作ギターの誕生である(参考:Wikipedia「Frankenstrat」)。
そして1978年、Van Halenのデビューアルバムに収録された「Eruption」で、このギターを抱えたエディはある奏法を世に見せつけた。左手だけでなく右手の指板まで使い、まるでピアノを弾くように音を紡ぐ「ライトハンド奏法(タッピング)」だ。わずか1分半ほどのこのインストゥルメンタル曲は、世界中のギタリストに衝撃を与え、以後のロックギターの表現の幅を大きく広げることになった。今回は、そんなエディ・ヴァン・ヘイレンが実際に使ってきたギター・アンプ・エフェクターを、この2つのエピソードを軸にまとめて紹介する。
ギター:自作フランケンシュタインから、後継機EVH Wolfgangまで
フランケンシュタインは完成後も改造が繰り返された。当初載せていたギブソンのハムバッカーは、1981年頃にSeymour Duncanのハムバッカーへ交換されたと言われており、トレモロユニットもフロイドローズへ換装されるなど、常に「その時いちばんいい音が出る形」へアップデートされ続けた個体だ(参考:Equipboard「The EVH Frankenstrat Revolution」)。1980年代には自身のブランド用にKramerとも協業し、「Kramer 5150」と呼ばれるモデルをステージで使用していた時期もある。ただしエディ自身は、Kramerが市販していた「Barettaモデル」について「自分とは無関係だった」と語っており、実際にエディが弾いていたギターと市販シグネチャーモデルの間には食い違いがあったという逸話も残っている(参考:Wikipedia「Kramer Baretta」)。
1980年代半ばには、Steinbergerのヘッドレスギター「GL-2T」にも傾倒した時期があった。開発者ネッド・スタインバーガーとともにトレモロユニット「TransTrem」の開発にも意見を出していたとされ、「Summer Nights」のミュージックビデオでは、自身のアートワークをあしらったスタインバーガーが印象的に使われている(参考:Guitar Player)。
2005年にFender傘下で自身のブランド「EVH」を立ち上げてからは、フランケンシュタインの設計思想を受け継いだEVH Wolfgangシリーズが後継機となった。バスウッドボディにメイプルトップ、クォーターソウンメイプルネック、専用設計のWolfgangハムバッカー2基、そしてフロイドローズ系ブリッジという構成で、息子ウルフギャングの名を冠したこのモデルは、現在もエディのサウンドを再現したいギタリストの定番になっている。上位モデルのEVH Wolfgang USAはUSA製の高級ラインで、より手の届きやすい価格帯には量産モデルのEVH Wolfgang WG Standardもラインナップされている。フランケンシュタインそのもののレプリカとしては、ストライプ柄をそのまま再現したEVH Striped Seriesも選択肢に挙がる。
なお、同じくハードロック/メタル系でタッピングを多用するギタリストとしては、カーク・ハメットも知られている。ESPシグネチャーとヴィンテージ・レスポールを使い分けるハメットとは対照的に、エディは1本の自作ギターを弾き込み、必要に応じて自分で改造していくスタイルだった点が大きな違いだ。
アンプ:改造マーシャルの「ブラウンサウンド」から、Peavey・EVH 5150へ
エディの音作りの核心は、実はギターよりもアンプにあると言われている。初期Van Halenの分厚い歪みは、1967〜68年製のMarshall Super Lead(通称「1959」)のヘッドを改造し、電圧を落とすための「バリアック(可変電圧トランス)」を通して88〜140V程度まで電圧を下げつつ、ゲインを目一杯まで上げるという特殊な使い方で作られていたとされる。この独特なセッティングは「ブラウンサウンド」と呼ばれ、Van Halenの初期6枚のアルバムを支えたサウンドの土台になった(参考:Uber Pro Audio)。電圧を落として真空管を無理やり歪ませるこの手法は今では定番のテクニックの一つになっているが、当時はエディ自身が試行錯誤の末にたどり着いたものだったという。
その後のキャリアでは、Peavey社と協業してシグネチャーアンプ「Peavey 5150」を開発。ハイゲインアンプの定番として今も語り継がれる名機となった。そして2005年にEVHブランドを立ち上げてからは、その設計思想を受け継いだ「EVH 5150」シリーズへと軸足を移していく。現行ラインでは、コンパクトなEVH 5150III 50W ヘッドや、エントリー向けに開発されたEVH 5150 ICONIC 80W ヘッドなどが手に入りやすい選択肢だ。改造マーシャルの「電圧を落として歪ませる」というアイデアが、最終的に自分の名を冠したアンプへと結実していったのが、エディのアンプ選びの大きな流れと言える。
エフェクター:フランジャーとフェイザーで作る「揺れ」の演出
エディはディストーション系のペダルをほとんど使わず、歪みはあくまでアンプ本体で作るタイプのギタリストだった。その代わりに存在感を放っていたのが、フランジャーとフェイザーだ。「Eruption」に続く「Ain’t Talkin’ ‘Bout Love」「Atomic Punk」といった初期の楽曲ではMXR Phase 90によるうねりが効果的に使われており、後年Dunlop/MXRと共同でリファインしたMXR EVH90 Phase-90として製品化されている。
もう一つの代名詞的なエフェクトがフランジャーだ。MXRの「117 Flanger」は初期Van Halenサウンドに欠かせないペダルとされ、こちらもエディ監修のシグネチャーモデルMXR EVH117 Flangerとして現在も販売されている。通常のマニュアル・ワイド・スピードのコントロールに加え、EVHスイッチを踏むとよりジェット機のような極端なサウンドに切り替わるのが特徴だ。このほか、ライブ音源では6バンドEQやMaestro Echoplex、Univoxのテープエコーなどをボード上に組み込み、曲によって薄く空間系を足していたと紹介されている(参考:Guitar World)。歪みそのものはシンプルに保ちつつ、フランジャーとフェイザーの「揺れ」で楽曲ごとの表情を変える、というのがエディのエフェクター使いの基本方針だったようだ。
ライトハンド奏法(タッピング)の代名詞的存在
エディ・ヴァン・ヘイレン以前にもタッピングを使うギタリストは存在していたと言われているが、「Eruption」のインパクトによって、この奏法を世界中に知らしめた張本人として真っ先に名前が挙がるのはやはりエディだ。右手の人差し指や中指で指板をタップし、左手のハンマリング・プリングと組み合わせることで、通常のピッキングでは出せない速いフレーズや、ピアノのような滑らかなアルペジオを生み出す。この奏法は以後、ヴァン・ヘイレン・チルドレンと呼ばれる多くのギタリストに継承され、ハードロック・メタルのソロにおける定番テクニックの一つになった。EVHの代名詞的奏法について詳しくは、タッピング奏法の解説記事で基本フォームや練習法を紹介しているので、あわせて確認してみてほしい。
なお、同じくハードロック/ハードロック・レジェンドとして語られることが多いギタリストにスラッシュ(Guns N’ Roses)がいる。トップハットとレスポールで知られるスラッシュのブルースロック寄りの太い音作りに対し、エディは自作ギターと改造アンプで「歪みそのものを設計する」タイプだった、という対比で聴き比べてみるのも面白い。
まとめ
エディ・ヴァン・ヘイレンの音作りは、「既製品を組み合わせて理想の音を自分で作る」という発想が一貫している。パーツを寄せ集めたフランケンシュタイン、電圧を落として無理やり歪ませた改造マーシャル、そして最終的にPeavey・EVHという自身のブランドへと発展していったアンプの系譜は、どれも「今ある機材でどこまで理想の音に近づけるか」を突き詰めた結果と言われている。
フランケンシュタインそのものを再現するのは難しくても、「歪みはアンプで作り、揺れ系エフェクトで表情を足す」という考え方や、タッピングという奏法そのものは、今の機材でも十分に再現できる。まずは手元のギターとフェイザー・フランジャーの組み合わせから、エディっぽさを探ってみるのはどうだろうか。
本記事の機材情報は各種インタビュー・レビューサイトの情報を参考にしています。エディ・ヴァン・ヘイレンの機材構成は時期やライブによって変化しており、断定できない部分は「〜と言われている」という表現にとどめています。最新の情報は公式サイトや各種Rig Rundown記事もあわせてご確認ください。







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